またブログをほぼ1年放置してしまった……。
取り急ぎ軽く何でも書こうということで、タイトル通り2023年に読んだ漫画の中でも特に印象に残ったり感銘を受けた作品ベスト10です。
一応「2023年内に連載中・完結した作品」の条件で選出。別個で旧作の感想記事もいずれ書きたいところ。
ではやっていきましょう。
10位 『コワい話は≠くだけで。』
原作・梨/漫画・影山五月
連載中、既刊2巻
漫画家の主人公はホラー作品を描くことに。様々な怪談話を現地取材はせずにあくまで「聞くだけ」に留め、それらを漫画化していくが……。
映像作品や小説でモキュメンタリー形式のホラーが隆盛して久しい中、漫画媒体では本作がかなりのストライクかも。
最初はデフォルメの効いたエッセイ風の絵柄で主人公が取材するパートと怪談の内容をリアルな絵柄で描写するパートに分かれていたのが、だんだんその境界が崩れていくのが表現として見物。本作を掲載しているサイトの「更新未定」の告知でゾクッとさせたりと、ウェブ連載のフォーマットも存分に活かしている。
これから絶対によからぬことが起きるだろうっていうかもう起きてるんだけど、超ビビりの自分にも読み進められる絶妙な「ピリ怖」感で心地良い。
9位 『令和のダラさん』
作・ともつか治臣
連載中、既刊3巻
山里の社に封じられた恐ろしい半人半蛇の怪異「姦姦蛇螺」は令和の現在、陽気な姉弟にぐいぐい迫られていた……!
コメディチックな異種交流譚をやりつつも並行して進む過去パートの陰惨ぶりはガチで、この先どうなるかの見えなさは油断ならない。それはそれとして新たな敵も容赦なくギャグ堕ちさせる。作者の手綱の妙に毎回唸る。
8位 『瀧夜叉姫 陰陽師絵草紙』
連載中、既刊5巻
時は平安、安倍晴明と源博雅に持ち込まれた怪現象調査。その行先にはあの大怨霊の影が……。
耽美幽玄な魅力の原作を愛嬌たっぷりエネルギッシュに漫画化している、素晴らしいコミカライズ。
聖人然としていた僧侶が魔人との死闘の中で「うおおおお俺はこのために研鑽を積んできたんじゃああああ!!」と獰猛に歓喜するシーンが胸を衝く。
7位 『違国日記』
作・ヤマシタトモコ
今年完結、全11巻
両親を亡くした15歳の姪を引き取った作家。二人の共同生活はあっという間に3年目を迎え……。
自分と他者との距離についての物語だったと思う。死んだ人間のことは生きている者からはもう分からないし、生きている同士ですら……。朝への親愛が高まった槙生がそれ故に彼女にとって一番の悪手をとってしまうのがまさに。それでも言葉を尽くす、そういう話。
6位 『生き残った6人によると』
作・山本和音
連載中、既刊5巻
ゾンビパニックの中ショッピングモールに立て籠った男女6人。彼らはサバイバルしつつ恋愛に「感染」していく。
ゾンビものというシチュエーションで繰り広げられるリアリティショー的な恋愛模様が魅力であり、そしてそれすらも舞台として「ショッピングモール」という空間を描くことが本当の目的なのでは?と思うほど、モールの風景が丹念に焼き付いていく。
「6人」のメンバー構成が出たり入ったりして流動的なので、タイトル通り最終的に生き残る6人とは誰になるのか……?というスリルが常にある。
5位 『よふかしのうた』
作・コトヤマ
連載中、既刊18巻
吸血鬼ナズナに出会い夜の世界に導かれた中学生コウ。多種多様な吸血鬼達、復讐にかられる探偵、同じく吸血鬼に恋した親友……。数多の出来事を経て、残るはナズナとコウの恋の結末。
いつの間にか巻数を重ねていた本作も200話での完結まであと数話(2023年12月末時点)。登場人物のほとんどが舞台から去り残り少ない話数の中で、ナズナとコウは昼の世界の夢を見たり夜の海辺で遊んだりしてだらだらと過ごしている。
前作『だがしかし』でもそうだったけれど、コトヤマ先生は物語終盤の寂寥感や弛緩した時間感覚の演出がずば抜けていると思う。しかもこの期間が現実の年の瀬と重なっているというミラクル。
夜明けはもうすぐそこ……。
♪ 今 falling falling
二人ぼっち気づかない
カーテンコールにも
4位 『付き合ってあげてもいいかな』
作・たみふる
連載中、既刊11巻
破局したみわと冴子はそれぞれ新たな恋人との関係に四苦八苦する日々。彼女達の大学生活も終わりが近づいていた……。
恋愛漫画のメイン2人が別れてからの方が物語が長くなっているというなかなか稀有な状況で、彼女達が真に安息を得られている時期がほぼないというストレスフルな作劇で、それでも終始面白く読めてしまうという凄い作品。
読んでる間ずっと「じ、人生ままならねえ〜〜!」と呻いてばかり。でも読んじゃう。
3位 『盤王』
原作・綿引智也/作画・春夏冬画楽
連載中、既刊4巻
数百年間ずっと将棋に魅せられてきた吸血鬼、彼は経営難に陥った将棋教室を救うため表舞台の「竜王戦」に挑む!
もうコンセプトの時点で勝ってる作品で、しかも次々と出てくる強豪棋士達の生き様や棋戦も真っ当に面白い。本作に出会えた喜びを毎話噛み締めている。
ちなみに超ハイレベルな棋戦の戦況を観戦者達(=読者)にどう理解させるかというのは将棋漫画の永遠のテーマだと思うけれど、本作は「現実でも実施されているAIによる形勢判断システムでどちらが何%優勢か視覚化する」という身も蓋もない一手(笑)。それでも読者を興醒めさせないしよりスムーズに勝負を演出できるという作者両名の自信と実力の表れだろう。
あと物語に全く無関係に様子のおかしいリアクションを取り続ける約1名のキャラがこの漫画の屋台骨になっていて、何か納得いかないけど面白いんだよな……。
2位 『まったく最近の探偵ときたら』
作・五十嵐正邦
連載中、既刊14巻
かつての敏腕高校生探偵・名雲圭一郎は10数年後、体のあちこちにガタがきた中年探偵となっていた。そこへ女子高生の真白が助手として押しかけてきて……。
笑った。とにかく笑った。久しぶりに漫画を読んで笑い過ぎで呼吸困難になるという体験をした。
毎回話の展開自体がおかしくどのキャラも何かネジが外れていて、特に真白の常軌を逸した暴走が外れ無しに面白い。作者の圧倒的画力あってこそ。
最新刊では名雲と宿敵がついに因縁の再会を果たすのだが、二人とも加齢による記憶力劣化ですれ違うという悲劇が涙を誘う……。
1位 『夢幻紳士 猟奇篇』
作・高橋葉介
連載中、未刊
高橋葉介のライフワーク『夢幻紳士』シリーズ最新作。麗しの少年探偵・夢幻魔実也が毎回女装して怪事件を調査し毎回何やかんやで帝都が壊滅する!
はい問答無用でこれが1位です。
シリーズ前作の『夢幻童話篇』では魔実也の女性を惑わす気性に批判的視点を持ち込んだり、『魔実子さんが許さない』では魔実也の女性版を主人公にしてその存在を相対化したりと、高橋先生はここ数年で魔実也のキャラクター性を今一度再構築しようとしていたように思える。勿論今までも彼は作品ごとに容姿や性格をマイナーチェンジしてきたので(ゴジラや鬼太郎みたいなものですね)、また何度目かの「脱皮」の時期なのだろう。
それでも今回は何十年ぶりかに少年の姿になり、しかも毎回女装姿をお披露目するというなかなかの急旋回。彼の男性性をめぐるテーマからは一気に後退したような気がしなくもないけれど(笑)、ここまでスラップスティックに振り切れてくれるとやはり猛烈に面白い。
第2話は過去作「腸詰工場」がリファインされたストーリーで、そしてこれまで高橋作品で何度か登場しては毎回酷い目にあってきた「那由子」が今回は盛大に逆襲するという結末になっていて痛快。
これからしばらくは様式美的な物語を進めつつ、最後にはまた夢が覚めていく儚さ・美しさを魅せてくれるのだろうという信頼がある。楽しみ。
ベスト10外だけど良かった作品
「ダンジョン×グルメ」という一発ネタからあれよあれよという間に世界観を掘り下げて堂々たる名作ファンタジーとして完結した『ダンジョン飯』、西尾維新のハッタリと大暮維人のビジュアル力が運命のシナジーを果たしていた『化物語』コミカライズ、1年で1話というペースになってしまったけど桁外れの立体戦闘表現で十分お釣りが来る『FGO英霊剣豪七番勝負』コミカライズ、これはコミカライズというか一体何??と疑問符が乱れ飛ぶも暴力的な漫画の上手さで原作も読者も蹂躙してくる『追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~』、超美麗画力と引き換えにIQと品性を悪魔に売り渡したと思われる破廉恥妖魔アクション『紅椿妃』、キャンプ漫画だけど最新刊では新キャラ活躍とともに半分くらいロードバイク漫画になって新しい血を入れた『ゆるキャン△』……等々
はい、こんな感じの2023年漫画ベスト10でした。
夜中にコーヒー飲んでしまって眠れないからとブログを書き進めていたらもう5時です。
こんな大晦日でいいんでしょうか。よくないですね。
来年(明日)からはちゃんとします。本当です。
ちなみに今年は自分でも久しぶりにオリジナル創作の続きを描いていました。
プロとは比べるべくもない下書き作品だけれどやはり自分で描いてみて初めて分かることもあり、漫画読みが大いに捗ったのも確かでした。
来年も漫画摂取と創作を良い感じのバランスで続けていきたいですね。
良かったら読んでみてね↓
『シガレット×セーラー』 第4話「繡眼児」1/6 pic.twitter.com/r0SYYKeN45
— 絵樟 (@EX5551) 2023年12月30日