ケッカロン。

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『ハイキュー!! TO THE TOP』第4話「“楽”」感想

 日向の飽くなきアグレッシブさが合宿メンバーにも伝播し、居残り自主練という切磋琢磨につながっていく。

 そして今回日向が得て周りに伝えた学びが、忙しないラリーの中でもゆっくり高いレシーブをすることでプレーに余裕を作るという「楽」なのも面白い。

 ガンガン前のめりなプレースタイルの日向が、一見それに反するような保守的なテクニックを手にする。しかし、前回の「スプリット・ステップ」も同じく、全てはそこで生み出されるゆとりをバネにより自在に動くという目的のために他ならない。

  

 さらに今回アニメならではの演出で白眉だったのは、疲弊した百沢が日向に「お前が選ばれれば良かった」と口にしてしまった場面。

 失言を後悔する百沢のモノローグと並行して日向をカメラが下からパンして映していく。百沢視点の重い雰囲気に反して、いざ映し出された日向の表情はコミカルなもので、さらに彼らしい陽性な発言で緊張は解れる。しかし日向の顔がフレームインしてすぐにおどけた仕草をするまでのゼロコンマ数秒ほどの一瞬、目を見開いた無表情の彼が映りこんでいる*1

 こういうほとんどホラーのような演出は原作に時折あるもので、それをアニメオリジナルで入れ込んできたのは本当に原作理解度が高いことの証明だろう。

 

 一方、影山はユース合宿の中でも存在感とプレーの冴えを発揮し、彼に目をつけた強豪達を無自覚に煽りつつ彼らと交流していく。しかしその中で宮侑にスパイカーの要求にしっかり応えてみせる自分のプレーを「おりこうさん」と称され、ただならぬ蟠りを抱えることになる。

 合宿の正規メンバーであり最初は高揚していたが、直面した自分の課題をつかみかねる影山。すでに好循環を手にしつつある日向とは対照的に、彼の正念場はここからなのだ。

  

 それにしても、「ボール拾い」も「楽」も「おりこうさん」も全てはやがて来たる稲荷崎戦への伏線だったことをふまえて今回を観ると、とても感慨深い。

 

*1:恐怖映像番組なら巻き戻し&スロー再生で「お分かりいただけただろうか……」ってナレが入るやつだよ。