ケッカロン。

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『ハイキュー!! TO THE TOP』第3話「視点」感想

 厳しい現実を味わった末に、「何ができるかを探す」という方向性を得た前回のラスト。

 そして今回はサブタイが表す通り、前回にもまして日向の「目」が何を見るのかを克明に描くエピソードだ。

 

 できることを探すために、全体を見渡すことを欲する日向。そこから繋げて洗濯もの干しがてら高所から練習風景を俯瞰する場面を入れることで、日向の視点が文字通り一段階上のステージに上がったことを示す。

 そして彼の目に映るのは目の前の光景だけではない。選抜メンバーのプレーに注目しつつ、自分ならどう動いてきたか、烏野チームメイトのプレイや言動、さらには何年も前の記憶からも比較参照できるものを引っ張り出して、眼前の情報とかけ合わせて自分の学びに変える。

 日向の視野が空間的にも時間的にも拡がっていく、静かなダイナミズム。

 

 そうして得たものを見様見真似でボール拾いに活かそうとするが、最初は当然自分の体を上手く操れずに失敗が続く。しかしそんな試行錯誤の末に研ぎ澄まされた思考が徐々に反応速度や所作に表れ始め、日向に彼なりの達成感を与えていく。

 そして、日向のラーニングは後の場面で「何を食べたらいいか」というコーチとの問答に置き換えて反復される。「学ぶ」という理性的行動と「食う」という本能的行動が同列になっている日向の特異性を一発で分からせてくる。

 

 そんな彼の貪欲さにいよいよ周りが感化され始め*1、本来日向と正反対の小食派で向上心とも無縁に見える月島が彼に声をかけるところで終了。

 本当に、原作の巧みさを毎回思い知らされるアニメ化だ。

 

 また作画面で言うと、合宿の一員が「スプリット・ステップ」を実行した時の浮遊感のある軽やかな足捌きとその直後のどっしりした身体の沈み込みが、日向が獲得したいモノとしての説得力を与えていて芸コマだった。

 

 あと、本作のEDで今更気づいたこと。

 コーチ、監督、マネージャー、OB後援会等々、烏野排球部を支える人々を描いていった末に、体育館を去るメンバーをボール越しに映すラスト。「メインキャラ達を支える裏方達をボールが見ている」ということだったんだなあ。エモ。

 

*1:元から日向を合宿メンバー候補に挙げていて合宿中も日向の素質と変化をいち早く感じ取った穴原監督は、鷲匠監督に負けず劣らずの相当な慧眼なんだよなあ。