ケッカロン。

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『ハイキュー!! TO THE TOP』第1話「自己紹介」感想

 『ハイキュー!!』は、原作からしてコマ割りや描き文字等の漫画の特性を活かしてバレーボールの面白さをフルに伝えてくる傑作だ。アニメ版ではそこへ「動き」と「音」が加わることによって、バレーという競技の立体性・リズム感がこの上なくアニメ向きであることを知らしめた。各媒体ならではの魅力に十二分に呼応した幸福な作品だと言える。
 
 そしていよいよ始まったアニメハイキュー4期。
 3期まではキャラデザが原作よりやや等身高めに描かれていて、現在の本誌連載では日向達の高校卒業後の話になっていたので、今回のアニメでの原作寄りの絵柄で高校生当時の彼らを見ると、「あっ可愛い……」が第一印象になってしまった。特に、日向がほんとちっこい!

 以下、感想。
 

 物語は烏野が白鳥沢戦を制して春高出場が決まった後から。
 影山がユース強化合宿に、月島が1年生限定の疑似ユース合宿にそれぞれ招集され、日向は置いてけぼりに。
 身体と能力は伸び盛り、けれど将来への展望を優遇される程には足りないポテンシャル。思えば原作の今の展開に繋がる日向のジレンマがこの頃から強調されてきている。そこをぶち破るのはいつも彼の異常なまでのハングリー精神。
 彼の無鉄砲さにある者は怒り、ある者は歓喜し、ある者は冷徹に無価値を告げる。否応なく周りをかき乱し進撃していく、やはり本作の主人公だ。そして一方至れり尽くせりの環境にまだぼうっとしている影山との対比。二面から世界が広がり変容していく第1話。
 
 3期までの満仲勧監督からシリーズ中で絵コンテや演出を務めてきた佐藤雅子監督にバトンタッチしているけれど、原作の持ち味を殺さない安定した演出は変わらず。
 特に日向と鷲匠監督の対峙が目を引いた。
 日向に若き日の自分を重ねて敵視している鷲匠監督*1。1年生合宿に押しかけた日向が叱られているところへ、鷲匠がまず画面左側から顔を隠して侵入してくる。それからも基本は鷲匠(左側)・日向(右側)という位置関係がキープされ、さらにアングルを斜めに倒して鷲匠が上から日向を威圧するようなレイアウトが構成されている。そして実際に彼は日向に厳しい言葉を次々と投げかけ、すれ違うようにして画面右側へと去っていく。
 しかしその後に転換が起こる。奮起した日向が合宿の面々に邪魔したことを謝罪する。その時に再び日向と鷲匠が同一フレーム内に収まる一瞬があり、ここではまだ両者の左右関係は最初のまま。しかしそこから日向の背中からぐるっと回り込むカメラワークを経て彼が精一杯の宣誓を果たすと、左右が入れ替わって日向が画面左・鷲匠が右に位置している。そこで改めて睨み合う両者*2
 上手・下手の基本をなぞった舞台劇のようであり、カメラを自由に振れるアニメ独自の関係性演出。まだ試合どころか練習も始まっておないのに十二分に面白い。
  
 より柔軟になったこの絵柄でこれから合宿編が、そして春高の超絶試合の数々が描かれていくのかと思うと震えが止まらない。分割クールになってもいいから稲荷崎戦まではやってくれ……!

*1:しばらく先に盛大にデレることになるわけですが

*2:要は鷲×日から日×鷲になったわけですね(台無し)